東京高等裁判所 昭和29年(う)2480号 判決
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〔判旨〕しかし、原判決が判示第一の(一)として認定した業務上横領の事実たるや、被告人がN裁判所に勤務する執行吏職務の取扱代理として業務上保管中の三〇六〇〇円を横領したというのであるが、これを原判決の挙示する証拠に徴するに、被告人は不法領得の意思を以て右金員を着服し、しかる後に、これを数回に亘つて自己の飲食並びに遊興の資に充てて費消したと認定すべき事実であつたのである。すなわち、該事実たるや、自己の占有する他人の三〇、六〇〇円を横領したという一個の横領罪を構成する場合であつたのである。しかるに、原判決は該金員を数回に分けて費消した事実のある点に拘泥し、その事実毎に横領罪が成立するもののごとく解し、しかもその各横領罪における横領金額の不明のまま、これを併合罪として被告人を処断するの措置に出でたのであつた。原判決のこの措置は、事実誤認の違法に重さねるに、更に理由不備の違法を以てしたそしりを免れざるものである。しかり而して原判決は右第一の(一)と判示第一の(二)の収賄罪との間に併合罪の関係ありとして被告人を処断しているのであるから、右判示第一の(一)の事実認定における違法は、原判決に影響を及ぼすことの明らかな場合に該当し、被告人に対する原判決はとうてい破棄を免れない。
〔説明〕事実認定の点については特に附言はさしひかえるが、本件において単に着服横領の一罪を費消横領の一罪と認定したというのであれば破棄理由たる判決に影響を及ぼすこと明らかな場合とは直ちに考えられないであろう。然し本件ではそれが併合罪となるかどうかの点がからんでいるので破棄の問題を生じたのであるからこの点注意すべきである。